子供の頃からなぜか、漫画本やアニメ映画は遠い存在でした。強い興味を持ったことがあまりないのです。そんな僕が、あまりにも面白くて、映画館で3回観たアニメがあるんです。新海誠監督作品の『君の名は。』です。公開は2016年なので、学生のみなさんにも観た人はいるのでしょうね。ストーリー展開の凄さや映像の美しさ、そして、音楽との一体感も素晴らしかった。「前前前世」を歌いたくて、RADWIMPSのCDを買ったぐらいです。

ではいったい、古代の短歌と映画『君の名は。』がどうつながっているのか?それについては、『万葉集から古代を読みとく』を、本学図書館・「今村書店」に置きますから、「はじめに」だけでも手に取って読んでみてくれたらうれしいです。
実はこの映画のタイトル『君の名は。』のもとになっているのは、『万葉集』の中の一首なのです。実に切ない恋の歌です。
ちなみに、『万葉集』は、8世紀の中頃に完成した日本最古の歌集で、4516 の歌が収められています。その中で、「相聞歌」という夫婦、恋人、家族、友人などへの想いを謳ったジャンルが半数を占めており、さらに相聞歌の大部分が、恋の歌、ラブソングといわれています。いい歌がたくさんありますよ。恋心は1000年経っても変わらない。

今年の入学式の学長式辞で、僕は、BTSのキム・ナムジュンさんの言葉を紹介しました。
「みなさんに聞きたいのです。あなたの名前は何ですか?何にワクワクして、何に心が高鳴るのか。あなたのストーリーを聞かせてください。・・・あなたのことを話してください。話すことで、自分の名前と声を見つけてください」
名前ってなんでしょうね?
誰かに名前を聞くということはどういうことなんだろう?
上野誠さんは、本の「はじめに」の中で、こう書いています。
「自分が誰かと問うこと、あなたが誰かと問うことは、その人の結びつきを問うことだということを、この物語(君の名は。)は気づかせてくれるのである。そして自分と他人を区別し、自分が自分であることを示すものこそ、名前に他ならない、名は誕生とともに、新たな関係の中を生きていくことになるのである」
僕には娘と息子がいますが、考えに考え、ずいぶん悩み、迷いながら名前をつけました。みなさんの名前も、名付けた人がいて(自分ではつけられませんからね)、新しい生命の誕生を祝い、成長し歩んでいく人生への希望や願いを込めているのです。そんな営みを人間は古代から続けてきているのです。だから、名前というものには、「前前前世」から受け継いできた人間の魂が宿っているのかもしれません。
ところで、僕は最近、あるものに名前をつけるプロジェクトに参加していました。その名前は、さまざまな人々の想いを背負って誕生の日を待っています。
君の名は?
武雄アジア大学 TAKEO ASIA UNIVERSITY です。
